ドンキイ探検隊

子供達の年令

初版97.5.2／改訂97.7.21

湖からハリ・ハウ農場までの急勾配の野原を、　　　
ロジャが右、左と大きくジグザグに横ぎりながら　　
走ってきた。ロジャは、七つでもう末っ子ではない。
アーサー・ランサム
『ツバメ号とアマゾン号』より

子供達の年令

　ランサムサガでは、主人公である子供達の姿形について、ほとんど説明がありません。最近の中学・高校生向けの小説が、主人公の年令／性別／身長／体重／ヘアスタイル／髪の色／瞳の色／服装／口癖などを登場直後から詳細に描写しているのに比べれば、あたかもランサムは極力、子供達の姿形の描写を避けているかのようです。

　そのため、ランサムサガの子供達の年令がはっきりしないのです。
　わかっている年令はわずか２つ。ロジャとブリジットだけです。
　ロジャに関しては『ツバメ号とアマゾン号』の冒頭、７才であると記述されています。ブリジットに関しては、同じく『ツバメ号とアマゾン号』の第16章「誕生日のパーティ」で２才の誕生日を迎えたことがわかります。
　また、『ツバメ号とアマゾン号』の第10章「休戦交渉」で、アマゾン海賊は概してツバメ号の乗組員より大きく、一人はジョン船長よりも大きく、もう一人もジョン船長と同じくらいだという描写があります。

　この描写とロジャとブリジットの２人の年令から、ウォーカー兄姉妹弟とアマゾン海賊の年令を推定します。 
『ツバメ号とアマゾン号』
　13才　ナンシイ
　12才　ペギイ　　ジョン
　11才　　　　　　スーザン
　 9才　　　　　　ティティ
　 7才　　　　　　ロジャ
　 2才　　　　　　ブリジット

Ｄ姉弟の年令

　ドロシアとディックが登場するのは『ツバメ号とアマゾン号』の翌年の『長い冬休み』です。ドロシアとディックは、スーザンからティティやロジャと同じ年少のグループと見なされます。しかし、ドロシアは第４章「イグルー」にて、自分とペギイはたいして年は離れていないと感じています。

　これだけを根拠に、Ｄ姉弟の年令を推定します。 
『長い冬休み』
　14才　ナンシイ
　13才　ペギイ　　ジョン
　12才　　　　　　スーザン
　11才　　　　　　　　　　　　ドロシア
　10才　　　　　　ティティ　　ディック
　 8才　　　　　　ロジャ
　 3才　　　　　　ブリジット

オオバンクラブの年令

　オオバンクラブ（トム、ポート＆スターボードの双子、死と栄光号のジョー、ビル、ピート）が登場するのは『長い冬休み』の翌年、『オオバンクラブの無法者』『六人の探偵たち』です。
　ドロシアは第２章「失望」にて、ヨットレースをしているポート＆スターボードを見て、自分とさしてかわらない年令だと感じています。
　ピートの年令に関しては、『六人の探偵たち』の冒頭で上の門歯が抜け変わっているというシーンがあります。これは重要な根拠です。あるランサマイトのお母さんが指摘されたのですが、この上の門歯が抜け変わるのは６〜７才だということです。
　ジョーとビルは、ピートのお母さんからピートをきちんと時間通りに寝させることという約束をさせられているようです。ということは、ジョーとビルは少なくともピートより２才くらい上ではないかと考えられます。

　以上の理由から、オオバンクラブの年令を推定します。 
『オオバンクラブの無法者』『六人の探偵たち』
　15才　ナンシイ
　14才　ペギイ　　ジョン
　13才　　　　　　スーザン　　　　　　　　トム
　12才　　　　　　　　　　　　ドロシア　　ポート、スターボード
　11才　　　　　　ティティ　　ディック
　 9才　　　　　　ロジャ　　　　　　　　　ジョー、ビル
　 7才　　　　　　　　　　　　　　　　　　ピート
　 4才　　　　　　ブリジット

ウナギ族の年令

　ウナギ族（マストドン、デイジー、ダム、ディー）の年令はやっかいです。まず、ウナギ族が登場する『ひみつの海』がいつの物語なのかを特定するのが難しい。いろいろ悩んだ挙句、あるきちんとした根拠（ 年表 の項参照）から『六人の探偵たち』と同じ年であることが判明しました。

　さて、まずはマストドンですが、『ひみつの海』の第８章「マストドンのすみか」にて、ロジャよりは大きいがジョンほどではないと描写されています。また、第16章「敵の国」では、マストドンはとても強いのでジョン以外は誰もかなわないと、ペギイが言っています。
　ダムとディーは、第19章「急追」にて、デイジーの口から、ふたりはよく双子に間違われるが双子ではないと紹介されています。
　デイジーは、第19章「急追」にて、ダムとディーを私の弟だと言っているのですが、原文では“These are my brothers”となっており、ダムとディーが弟だと決めることはできないという指摘もあります。また、先の第18章「志願した捕虜」でデイジーはダムとディーより小柄だという描写もあるのです。

　手掛かりはあるのですが、決定打がありません。
　そこでもう一押し。
　第28章「野蛮人のお祭り」にて、ウナギ族に虜にされたツバメ号の探検隊が、生贄にされそうになっているブリジットを救うため、反撃に出ます。まず、ロジャがマストドンのお腹に頭突きをくらわせ、マストドンはダウン。次にティティがデイジーを組み伏せます。ジョンはナンシイと（おそらくは）ペギイのふたりととっくみあいになっています。
　さて、ジョンが相手にしているふたりがナンシイとペギイなら、残るウナギ族はダムとディーです。ならば、このふたりが、生贄の柱に近づこうとするスーザンにしがみついているのです。スーザンはふたりをひきずりながら進もうとしています。ここが注目点です。

　女の子であるスーザンが、いくら火事場のなんとやらを発揮したとしても、男の子ふたりをひきずることは難しいはずです。それが可能だとすれば、男の子ふたりがスーザンより３〜４才ほど下である場合でしょう。
　ダムとディーは双子に間違えられるけれど双子ではありません。なら、ダムとディーの年令差は１才だと考えられます。
　デイジーがダムとディーの妹だとすると、スーザンより５才も下になり、これではロジャよりも下になってしまいます。だから、デイジーはダムとディーの姉だと考えられます。背丈の問題は、デイジーが年の割には小柄で（やせっぽちだという描写が何度も出てくる）、ダムとディーが年の割には大柄だとすれば、なんとかクリアできるかな。

　以上の理由から、ウナギ族の年令を推定します。 
『ひみつの海』
　15才　ナンシイ
　14才　ペギイ　　ジョン
　13才　　　　　　スーザン　　　　　　　　トム　　　　　　マストドン
　12才　　　　　　　　　　　　ドロシア　　双子　　　　　　デイジー
　11才　　　　　　ティティ　　ディック
　10才　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ダム
　 9才　　　　　　ロジャ　　　　　　　　　ジョー、ビル　　ディー
　 7才　　　　　　　　　　　　　　　　　　ピート
　 4才　　　　　　ブリジット
　ちなみに、この話題はNIFTY-ServeのFSHIP-16番会議室（ てぃーるーむアーサー・ランサム の項参照）で討論されています。

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