ドンキイ探検隊

難破の日

初版98.2.11／改訂98.8.2

「一九三一年八月十一日。　　　　　　　　　　
　われわれはカンチェンジュンガに登頂した。」
アーサー・ランサム
『ツバメ号の谷』より

中継キャンプの夜

　カンチェンジュンガ登頂の前日、ツバメ号の４人は中腹に中継キャンプを作り、テントなしで寝ています。ジョンが夜中に目をさまし、星を数えていますから、晴れています。そして、この夜は闇夜です。スーザンが夜中に目をさまし、かまどの面倒をみていますが、この時、足元にある自分達の寝袋がぼんやりとしか見えないと記述されています。

　さて、カンチェンジュンガ登頂は、第27章「カンチェンジュンガの頂上」P415にある勝利宣言文から８月１１日であることがわかります。カンチェンジュンガ登頂が８月１１日なら、この日は８月１０日です。ここでも月齢（ 同盟の日 の項参照のこと）を調べてみましょう。
　１９３１年８月１０日は新月に近い三日月です。ところが、１９３０年８月１０日はというと満月なのです、これが。このデーターからも、カンチェンジュンガ登頂は１９３０年ではなく１９３１年８月１１日であり、同時に同盟の日が１９３０年８月１４日だということが裏付けられます。

異教の女神を崇めた夜

　９日目、１９３１年８月５日（水）、臭跡追いで夕食にまで遅れたアマゾン海賊は、罰として休暇を取り消され、艇庫にも立入禁止となります。この夜、アマゾン海賊は艇庫に忍び込んでアマゾン号の水をかいだして、その帰りに庭から月の光を浴びて異教の女神を礼拝しています。

>>「わたしたち、大おばさんを異教の女神だということにしたの。そして
>>　ね、大おばがねむってると思ったもんだから、寝室の窓の下で月の光
>>　を浴びながら、頭を地面にすりつけて礼拝してたのよ。」
　　　　−−−第24章「真昼のフクロウ」P365−−−

　１９３１年８月５日は月齢２１日の半月、月の出は英国ロンドンのデーターで２１時５４分、月の入は翌日の１１時５８分です。艇庫に忍び込んだのは真夜中だとペギイが言っていますので、夜空に半月が出ていたことになります。

　同じ記述を１９３０年８月５日で調べてみます。１９３０年８月５日は月齢１２日の太めの半月、月の出は英国ロンドンのデーターで１８時５分、月の入は０時１１分です。アマゾン海賊が艇庫に忍び込んだのが真夜中なら、もう月は沈みかけていたことになり、描写に合致しません。
　このことからも『ツバメの谷』が１９３１年の出来事だったということを確認できます。

　こうしてみると、『ツバメの谷』は８月の前半の出来事であって、『ツバメ号とアマゾン号』でヤマネコ島に上陸したのが８月１０日だったことを考えると、まだ夏休みはこれからだというところですね。
　そして、難破の日は１９３１年７月３０日（木）となります。

『ツバメの谷』のカレンダー
　《１９３０年説》

　１９３１年７月２８日（火）
　ヤマネコ島に上陸
　アマゾン海賊からの手紙を発見

　１９３１年７月２９日（水）
　馬蹄湾でアマゾン海賊と再会
　ティティとロジャ、ツバメ溪谷を発見

　１９３１年７月３０日（木）
　ツバメ号、馬蹄湾で難破する
　ツバメ号の４人、馬蹄湾に難船キャンプを設置

　１９３１年７月３１日（金）
　ツバメ号の４人、ツバメ溪谷を探検
　キャンプをツバメ溪谷に移すことにする

　１９３１年８月１日（土）
　フリント船長とアマゾン海賊、難船キャンプにくる
　みんなでキャンプをツバメ溪谷に移動

　１９３１年８月２日（日）
　ジョンとスーザン、マス湖でフリント船長に蚊ばりを教わる
　ティティとロジャ、湖の主を釣る

　１９３１年８月３日（月）
　おかあさんとブリジット、ツバメ溪谷にくる

　１９３１年８月４日（火）
　アマゾン海賊の襲撃を待ち受けるが、こなかった

　１９３１年８月５日（水）
　アマゾン海賊の襲撃を出し抜く
　ティティ、大おばさんに魔法をかける

　１９３１年８月６日（木）
　夜になって大雨が降る

　１９３１年８月７日（金）
　おかあさんがツバメ溪谷にくる
　ティティ、おかあさんに魔法のことを打ち明ける

　１９３１年８月８日（土）
　アマゾン海賊からの連絡を待つが、こない

　１９３１年８月９日（日）
　ナンシイ、モーターランチから矢文を放つ
　「カンチェンジュンガはまねく」

　１９３１年８月１０日（月）
　荒野を抜けてベックフットへ
　アマゾン海賊に途中まで道案内してもらい、中継キャンプに到着

　１９３１年８月１１日（火）
　中継キャンプにアマゾン海賊くる
　カンチェンジュンガ登頂
　霧にまかれ、ロジャが足を捻挫する

　１９３１年８月１２日（水）
　たんか隊、まじない師のウイガムまでロジャを迎えに行く
　おかあさんとブリジット、ツバメ溪谷にくる
　「ほら、あと四、五日すると、ブリジーの誕生日でしょ」
　ツバメ号戻る

　１９３１年８月１３日（木）
　ツバメ号とアマゾン号のレース
　ツバメ号の４人とアマゾン海賊、ヤマネコ島に戻る

　ちなみに、この話題はNIFTY-ServeのFSHIP-16番会議室（ てぃーるーむアーサー・ランサム の項参照）で討論されています。

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