ドンキイ探検隊
ランサムサガとは
初版97.3.3
「もう遊べない大人たちも、この物語を読むと、
ただ遊ぶのが楽しかった、永遠に続くと思っていた
子ども時代にかえってもう一度、
おもてで遊びまわっていた夢をみることができる 」
高柳佐知子
『ファンタジー・ランドのお料理ノート』より
アーサー・ランサムの１２冊の本
イギリスの作家アーサー・ランサム（1884〜1967）は、1930年に『ツバメ号とアマゾン号』を出版してから、1947年の『シロクマ号となぞの鳥』まで、全部で１２冊の本を書いています。
この一連の作品の主人公は、みんな１０才前後の子供達です。
長い夏休みを涼しい北部の湖のそばで過ごそうと、４人の兄姉妹弟がお母さんと乳母、それにまだ２才前の末の妹と一緒にやってきます。４人の目の前には、美しく広い湖と、小さな無人島。泊まっている農場には小さな帆船があって、彼らはその船であの無人島に行ってみたくてたまらない‥‥。
冒頭のシーンは魅力的です。
末の弟が、快速帆船になったつもりで、農場までの長い坂を向かい風の中、“間切りながら”駆けてきます。それを辛抱強く待つお母さん。お母さんの手には、４人が待ちに待っていたお父さんからの電報が握られています。
お父さんからの返事は、子供達だけで無人島へ行ってもいい、でした。
４人の探検家達はお母さんに見送られて、無人島に向けて出発します。
島の探検、そして自分達だけでテントを張り、自分達だけで食事の準備をし、自分達だけでテントに泊まる。冒険の日々の始まりです。
けっして派手なお話ではありません。
ただ、あまりにも子供達の描写が素晴らしく、あたかも、読んでいる自分もそこにいて、子供達と一緒に冒険しているような気分にさせてくれます。
この１２冊の本は、岩波書店から「アーサー・ランサム全集」として出版されています。１２冊のタイトルは
『ツバメ号とアマゾン号』『ツバメの谷』『ヤマネコ号の冒険』
『長い冬休み』『オオバンクラブの無法者』『ツバメ号の伝書バト』
『海へ出るつもりじゃなかった』『ひみつの海』『六人の探偵たち』
『女海賊の島』『スカラブ号の夏休み』『シロクマ号となぞの鳥』
です。
ランサムサガへの誘い
もし、あなたが本好きで、アウトドアに興味があって、自分でも野山や河や海に出ることがあるなら、ランサムサガはあなたに至福の時間を与えてくれるでしょう。
ランサムサガ、岩波書店の「アーサー・ランサム全集」は入手しやすい本ではありません。図書館の児童図書のコーナーに置かれていることは多いのですが、本屋ではあまり見かけません。
もし、見かけたら、迷わず買っておきましょう。
どうしようかなと思われる方は、同じ岩波書店から「岩波世界児童文学集」の第２９巻に『ツバメ号とアマゾン号』が収録されています。
１２冊もあると、だんだんマンネリになってくるんじゃないかと思われる方、どうぞご心配なく。好みもありますが、７冊目の『海へ出るつもりじゃなかった』は＜ホーンブロワーシリーズ＞に匹敵する海洋冒険小説ですし、９冊目の『六人の探偵たち』は＜シャーロック・ホームズシリーズ＞張りの探偵小説、１１冊目の『スカラブ号の夏休み』は思わず笑い転げ、最後にシンミリとさせる優れたコメディです。
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