ドンキイ探検隊
ティティとピーター・ダック
初版98.7.19
「ピーター・ダック老人も島にのこしてきたんだね？」
ティティはフリント船長を見て、一瞬いやな気もちになった。
アーサー・ランサム
『ツバメの谷』より
ティティの気持ち
『ツバメの谷』で、フリント船長がティティにピーター・ダックについて訊ねるシーンがあります。なんでもない質問で、軽い挨拶代わりの言葉なのに、ティティは一瞬いやな気分になっています。
>>「ピーター・ダック老人も島にのこしてきたんだね？」
>> ティティはフリント船長を見て、一瞬いやな気もちになった。でも、
>>ここにいる人たちはみんなピーター・ダックのことは知っているんだか
>>ら。
>>「彼は物語の中の人物でしょ。」と、ティティはいった。
−−第７章「船大工のフリント船長」P111−−
なぜ、ティティは一瞬いやな気分になったのでしょう。
ピーター・ダックの物語
想像ですが、子供達の間では、ピーター・ダック（の物語）はティティの口からまず言い始められることが不文律になっているんじゃないかなと。つまり、ティティ以外の口から、ティティよりも先にピーター・ダックの名前や彼の行動についての話が出ることはないんじゃないのでしょうか。
なぜなら、ピーター・ダック（の物語）はティティのものであって、ティティがとても大切にしていることを、子供達はみんな知っているはずだからです。唯一、ティティよりも先にピーター・ダックの名前を出すのはロジャだけで、ロジャはピーター・ダックのことを“子供だまし”“ティティの夢物語”なんて絶対に思っていませんから、ティティもそれを許しているようです。
で、あのシーンでは、フリント船長が先にピーター・ダックの名前を出しています。だから、ティティは「一瞬いやな気持ちになった」んじゃないでしょうか。
うまく言えませんが、ティティのピーター・ダック（の物語）は、いわばティティの心の中の自分の部屋みたいなもので、そこにはティティが招待しない限り誰も入ってはいけないわけで、許しもなく勝手に入られるのをティティはものすごく嫌がるんじゃないかと。
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