ドンキイ探検隊

アマゾン海賊の帽子

初版97.7.21／改訂98.11.23

「今だ。」と、ジョン船長が叫んだ。　　　　　　　　　　　　　　
「二の矢をつがえないうちだ。ツバメ号ばんざい！」　　　　　　　
　四人のツバメ号乗組員は立ちあがって、またたくまに空地をなかば
横ぎった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　赤い帽子のアマゾン号の海賊も、四人を迎えうつためにテントから
とび出してきた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

アーサー・ランサム
『ツバメ号とアマゾン号』より

赤い毛糸の帽子

　『ツバメ号とアマゾン号』の第８章「海賊旗」で、初めてアマゾン海賊が登場します。その時の姿は「赤い毛糸の帽子、茶色のシャツ、青い半ズボン、ストッキングなし」です。
　私はずっと、この赤い毛糸の帽子とは、頭にぴったりとしたお碗状のものだとばかり思っていました。ただ、『ツバメ号とアマゾン号』の第11章「同盟して」に“大たるを運び上げる”ナンシイとペギイのイラストがあるのですが、これを見る限りでは、なんだか手ぬぐいで頬っ被りしているように見え、ちょっと気にはなっていたのです。

子供達の聖典『宝島』

　先日、小学校で読んで以来、今では物語の詳細はもちろん、ジョン・シルバーとジム少年以外の名前も忘れ果ててしまっていた『宝島』を読み返してみました。
　いや～、これはとても面白いです！
　これは子供達が夢中になるのも無理はありません。
　そして、いろんな発見が！

　ツバメ溪谷のピーター・ダック洞窟の中の落書き“ベン・ガン”って、『宝島』に捨て置きされてたベン・ガンのことだったんですね。読んでて、思わずアーッと声を上げてしまいました(^^
　それから“口笛を吹いて風を呼ぶ”という台詞もありますし、“黒丸”も２度も出てきますし、ジョン・シルバーのオウムは“八銀貨”が口癖だし、中でも一番興味深いのが、海賊の何人かが頭に被っていた“赤い寝帽（ナイトキャップ）”です！

　これって、アマゾン海賊が被っている赤い毛糸の帽子の原形（？）じゃないのでしょうか。なぜ海賊が“赤い寝帽（ナイトキャップ）”を被っているのかよくわかりませんが、これってサンタクロースが被ってるような円錐形の帽子で、被ると半分くらいがだらんと垂れ下がってしまう帽子だと思うのですが、どうなんでしょう？
　そして、そういうつもりで“大たるを運び上げる”ナンシイとペギイのイラストを見ると、確かに彼女達が被っているのは、この半分くらいがだらんと垂れ下がってしまう帽子に見えます(^^

　この“赤い寝帽（ナイトキャップ）”が出てくるのは、『宝島』の第21章「攻撃」です。シルバーに率いられた海賊達が、ジム達のたてこもる砦に総攻撃をかけるシーンです。柵を越えようとする海賊の一人が、赤い寝帽を被り、口にカトラスをくわえて柵にまたがっています。
　もしかして、ナンシイとペギイは、ここを読んで赤い毛糸の帽子を被ることにしたのではないのかなあ？

イラストに描かれた赤い帽子

　岩波版アーサー・ランサム全集にあるイラストでは、アマゾン海賊がどんな形の帽子を被っているのか、よくわかりません。でも、Puffin版のアーサー・ランサム全集には、これがよくわかるイラストがあるそうです。ばんざ～い！　やっぱり、サンタクロースが被ってるような円錐形の帽子でした(^^

　このイラストは、ランサムに関する学術的な研究をされている KIMURAさんのホームページ（トップページからコニストン湖の古い写真を通り抜けて、ホームページの下の方にある『ランサム・グッズ』そして『赤い帽子』を選んで下さい）で見ることができます。興味のある方はどうぞ！

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